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木村 敦; 長澤 尚胤; 島田 明彦; 田口 光正
Radiation Physics and Chemistry, 124, p.130 - 134, 2016/07
被引用回数:9 パーセンタイル:64.39(Chemistry, Physical)天然多糖類は有用な資源循環型材料でありながら、溶媒に難溶であり反応性に乏しいため、放射線架橋を行うためには架橋剤の添加あるいは誘導化等の前処理を必要とした。我々はイオン液体を用いて天然多糖類の一種であるセルロースを溶液化し、放射線を照射することで新規ゲル材料の開発に成功した。本研究では、イオン液体中天然多糖類の架橋反応の挙動解明を目的として、セルロースの架橋反応を誘起する活性種およびゲルの化学構造を調べた。放射線照射によるセルロースゲルの収率は、含水率の増加に伴い増大することから、水添加に伴う放射線誘起活性種の増加により、架橋反応が促進したと考えられる。そこで、含水率の異なるイオン液体にOHラジカル捕捉剤であるフェノールを溶解して放射線照射を行った結果、フェノールのOH付加体の生成量が含水率の増加に伴い増加したことから、OHラジカルが架橋反応に寄与することが示唆された。また、XPSによるセルロースゲルの元素分析により、セルロースには含まれない窒素の存在を確認したことから、イオン液体が架橋反応に関与している可能性が考えられる。さらに、イオン液体にキチンを溶解し、放射線照射によりゲル材料を作製することに成功した。